Riding Impressions
ドゥカティ社車両テスト部を統括するアンドレア・フォルニは、このインタビューの中でドゥカティ999のダイナミックなレスポンスの基となっている根本的なポイントについてまとめている。
ドゥカティの他のモデルが有するトラディショナルなハンドリングと比較して、ドゥカティ999のダイナミックなキャラクターはどのようなものか?
"ドゥカティ999の動的レスポンスは、ボローニャのモーターサイクルマニュファクチャラーがスポーツモーターサイクルのフィールドで築き上げたものを反映している、さらに何十年に渡って我々のスーパーバイクが勝ちとった名声の基となる数々のフィーチャーを磨き上げたものでもある。
第一にピークレベルの方向安定性は、サーキットやロード上でのとてもクリティカルなスポーツライディングに於いても、ソリッドな確実感のある安全なステアリングをライダーに提供する。 トップスピードでの様々なRが続く一連のコーナー、高い負荷のかかるサーキットやハイウェイでのコーナリング、フルスロットルでのダウンヒル等で、バイクのフロントはライダーの意図する方向に従う模範的な動きを見せる。 安定性を損なう程機敏性を重視した最新世代のスポーツバイクの"極端"なシャシにつきまとう、ステアリング振動や望みもしないサイドエフェクトを引き起こすことも無い。"
ドゥカティ999のフレームとシャシに関するベーシックなデザインチョイスは?
"この新型スーパーバイクは、全てのドゥカティが持つ独特な安定性を有しているが、設計上の特定の決断が、スーパースポーツモーターサイクルに要求される基礎条件を向上した。 それは :
1) ライダーの着座位置を15mm下げる。
2) スイングアームを15mm延長
3) シート/ハンドルバー間を10mm短縮
シート高を下げたのはコンフォート性向上のためか?
"この改良は、よく言われる快適性を得ることだけでなく、車両の動的レスポンスに多大に影響するからである。
事実、ライダーの着座レベルを下げることは、全体の重心を下げることに他ならず、モーターサイクル上のライダー位置は、大きく影響を及ぼすものなのである。"
何故ドゥカティ999の重心のポジショニングが動的レスポンスを向上させるのか?
"第一に、重心位置を下げることは、制動時・加速時の荷重の変化を抑えるからである。 結果、急激な加速時にバイクがプルアップ(特に低いギアの時、加速中のパフォーマンスを低下させる)する挙動を抑え、急減速時のリアホイールのリフト(車両の制動能力を低下させる)を抑えることができた。"
スイングアーム長はドゥカティ999の制動時・加速時の安定性に影響するのか?
"大いに影響する。 長いスイングアームは、前後輪にかかる静荷重の配分を決定し、フロントへの重量配分を大きくする、これによりプルアップを減少できる。 これにより、低いギアでフロントホイールのグリップが簡単には失われず、テスタストレッタの太いトルクを余すことなく引き出すことができる。 ロングスイングアームはまた、バイクのホイールベース(前輪車軸と後輪車軸との距離)を長くするので、制動時の安定性向上にも役立っている。 この伸長は、急加速時の荷重変化をも抑えるのである。 実際、ドゥカティ999の重量はフロントに集中するが、ハードブレーキング時のリアグリップの減少は、少ない荷重変化で打ち消される。 つまり、このモーターサイクルは"ケツを振らない"のである。"
ドゥカティ999の類稀なハンドリングを生んだパラメーターは?
ライダー/モーターサイクルユニット全体の重心を下げることは、ハンドリングにも好影響を与えている。 実際、曲がりくねったカーブの続く道を、ドゥカティ999は少ないエフォートでとてもクイックに転回し、人がうらやむほどのペースですり抜けることができる。
どのようにハンドリングと安定性を両立しているのか?
今まで述べたモディファイは、最適と判っていながら採用できない状況に陥らないよう、得られる効果を最大限にするよう"調整"されているものなのである。 ハンドリング向上には、ホイールベース延長はネガティブな要素を潜在させているが、重心を低くしたことでそれを補正、さらにはそれを上回る効果を得ている。
付け加えると、ライダーを重心に近づけることは、"ライダー/バイク"のロール軸を中心とした全体の慣性モーメント減少を意味し、バイクの倒れこみの速さをコントローラブルにし、最小のエフォートで出カーブの連続を高速ですり抜けることが可能である。"
しかし、ドゥカティ999の動的レスポンス向上のために採られたモディファイはランディグコンフォートに悪影響を及ぼさないか?
"シート高の低下は垂直線に対する上体の傾きを減少させ、結果的にライダーの手首にかかる負担を減らしている。 シート/ハンドルバー間の距離短縮も同様の結果を生む。 このケースではまた、ライダー上体の重量が手首から骨盤へと移動することになる。 総合的な結果として、両腕の疲労を低減、快適性向上に明白な効果をもたらし、エクストリームなライディングに必須なより良い身体コンディションをライダーは保つことができるのである。"
フューエルタンク形状はライディングコンフォートに如何に寄与しているのか?
このコンポーネントの形状というものは非常に重要なことである。 腹部の当たるタンク部は低められている。 これによりライダーは最も自然で疲労の少ない形でバイクとの完全な一体感を得る。 同様に、腿が収まる部分も脚が最も快適なポジションとなるよう、幅を削った形状としている。 しかし、最適なライディングポジション確立のための努力は、遅かれ早かれ個人差に関する形態学と帰してしまうので、ドゥカティ999は高度なエルゴノミクスソリューションを用意した。 新型スーパーバイクには、ライダーが自分のライディングスタイルと身体的構造に合わせることができる、それはシャシのパラメーター(キャスター、リアのハイト)、サスペンション(前後のスプリングプリロード、伸び側ダンピング、縮み側ダンピング)、さらにフットペグのポジション(前後方向と高さ)とシート(シングルシートバージョンのみ前後方向)がアジャストできるからである。 人間工学的適応性のゴールは、ドゥカティ999が成し得た偉大な結果の一つである。"