これにより748Rのエンジンは8バルブデスモドロミックエンジンの中でも最先端な内容となっている。 996レーサーと同じく高精度NC制御工作機械により仕上げられた燃焼室を持つシリンダーヘッドを採用しているのはその一例である。
吸気バルブはφ36mm、排気バルブはφ30mm、リフト量はそれぞれ12.5mmと10.5mmである。
このバルブシステムは、レーシング996とほぼ同等。 唯一の違いは、一般公道での扱い易さと低公害性を得るために、カムのプロファイル変更でバルブオープニングフェーズを狭くしオーバーラップ量を減少させている点である。
ここで強調すべき点は、最高出力発生回転数を1999年モデルの748SPSの11,500rpmから500rpm下の11,000rpmとしながら、最高出力を106馬力までアップさせている事実である。
従つて、新モデルの748Rのトルク/パワーカーブはより滑らかで、リニアな曲線で上昇して行くのである。 これにより歯数が1本少ないスフロケットが使用できファイナルドライブレシオが高められ、最高速度255km/hを実現した上メカニカルストレスが減少し、よって信頼性も向上されている。
この背後にあるもう一つイノベーションは、レース用に開発されたインジェクターを吸気管より上方に配置したφ54mmの新型スロットルボディである。
この構造は『シャワーフォーム』と呼ばれ、吸入される空気/燃料の混合状態を改善する。 これは燃焼効率を改善する上で不可欠なものである。
スロットルボディ長は、幅広い回転数に対応しつつシリンダーヘの混合気吸入をより効率的に行える長さに特別設計したもので、レーシングタイプの996と同様にエアボックス内に完全に収められている。
748Rのツインシリンダーエンジンに加えられた技術面・性能面の包括的な改良はこれだけではない。 熱力学的に高効率な形状のクラウン部を持つピストンや、新型のメタルシリンダーヘッドガスケツト、そしてレーシングタイプ用のチタニウム製コネクティングロッドを採用することで信頼性も向上している。

748Rチューニングキツト
「公道バージョン』の748Rのポテンシャルを引出し、スーパースポーツクラスのトップレベルの性能を発揮させるチューニングキットがレース用に用意されている。
ドゥカティパフオーマンスによるこのキットは、テルミニョー二製カーボンファイバーサイレンサーを使用したトータルな排気システムと、インジェクション/イグニッションCPU用のEPROMで構成される。 このシンプルなチューニングキットを装着することで即座に6馬カアップする(112馬力)。